令和2年、
地元の方々に惜しまれつつ閉店したお店が大牟田市の大正町にありました。
そのお店は「ショッピングいしい」。
飲み屋さんが連なる街中で、長い間コンビニエンスストアのような、
地元の方のための便利な商店の役割を担っていました。
人気の理由の一つは「ショッピングいしい」の店内に。
こちらの店にはお弁当屋「マイキッチン」があり、部活帰りの学生や一人暮らしの方などお客さんはもちろんのこと、深夜2時までという営業時間のため、深夜の飲食店勤務帰りの方まで様々な人にも有難い存在だったのです。
そこで不動の人気を誇っていたのが、「いか弁当」です。
イカゲソのから揚げとちくわ、昆布の佃煮、おかかとたくあんが乗ったお弁当…こちらにタルタルソースをたっぷり添えるのが大牟田流!
この通称「イカタル弁当」、大牟田市民なら必ず食べたことがある!
というより寧ろ、毎週食べている!というくらいの“なくてはならないもの”。
深夜まで空いていたとあり、飲んだ後の〆はこのお弁当!って市民も多かったんですよ(本当です!)
そんな地元客に惜しまれつつも閉店した「マイキッチン」。
そして今、「マイキッチン」のあの味を食べたい!と「イカタル弁当」を提供するお店が続々誕生しています。
どこも石井さんの味が大好きで、リスペクトしているからこその味わい。そんな3店舗をご紹介します。
マイキッチンの味の伝承! お母さんと娘さんが経営
「カントリーキッチン」
令和元年8月に誕生した「カントリーキッチン」は
石井さんの娘である良子さんが作ったお弁当のお店。
「マイキッチン」閉店後は、
お母さんの征子さんも一緒にお店でお弁当を販売しています。
征子さんと良子さんに、イカタル弁当の誕生秘話を聞いてみました。
マイキッチンの創業者、石井繁徳さんはどうしてこのお弁当を作ったのでしょう?
「お父さん、食べるのが大好きな人で(笑)。ノリ弁当にタルタル乗せるけど、自分がタルタル好きだからイカゲソのから揚げにも乗せたらいいんじゃないかって」。
「タルタルソースはね、玉ねぎ入れたら好き嫌いがあるでしょう?だからたっぷり卵と、あとはね、愛情をたっぷりいれているの。」
そう笑う征子さん。そのタルタルソースも見せてもらいました。
こだわりは他にも。
イカゲソのから揚げなどをあげる油は、こだわりの厳選のもの。
毎日全部入れ替えているのだとか。
今回特別にキッチンに入れていただきましたが、
油ものを扱うキッチンでありながら、床やシンクなどピカピカでした。
丁寧に丁寧に、愛情込めてお弁当を作っているんだろうな、と感じ取れます。
完成した「カントリーキッチン」の「イカタル弁当」。
イカゲソはカラッと揚がって香ばしく、タルタルは濃厚ながらもいくらでも食べれる感じ!
最初「イカタル弁当」を見た人は、
「ええっ!こんなカロリー高そうなお弁当全部食べれるの?」と思うことも。
大牟田市民を代表して返答します。
「大丈夫です!むしろ、タルタルをもっと食べたくなります」。
どのお弁当屋にも「タルタルソース」のトッピングがあるのが何よりも証拠。
さらにはタルタルではなく、「ミートソース」もあり、タルタルとミートソースを併せてトッピングしたお弁当は「ミーター」と呼ぶんですよ。
ハイカロリーなお弁当ばかりではなく、
「カントリーキッチン」には、栄養士・調理師が栄養バランスを考えた日替わり弁当や優しい味わいのお惣菜もあるので、ヘルシー志向の方もお勧めです!
タルタルの海へダイブ!
「おべんとうタル助」
可愛いロゴマークが目印の「おべんとうタル助」は、
令和3年1月にオープンしたお店です。
社長の冨山さんが大牟田名物イカタル弁の大ファンで、
このお弁当屋を作ったのだとか。
こちらの特徴は、何と言ってもその「タルタル愛」にあります!
タルタルソースは、マヨネーズに卵たっぷり、さらに刻んだピクルスが入っているのでタルタルの食感がしっかり。
他のお店では通常スプーン1杯のイカ弁当に、
「タル増し」→スプーン1杯追加
「タル増し増し」→スプーン2杯追加
…というようなトッピングがあるのですが、
イカゲソから揚げの部分全部をタルタルで覆う「タル溺れ(追加120円)」に、
さらにはタルタル上級者のトッピング。
全部をタルタルで覆う「タル凪(なぎ)」(追加220円)が!
こんなにタルタル乗せて、さぞかしどっかりするのでは…と思いきや、
ピクルスが入っているため比較的あっさり!不思議と食べれてしまうんです。
このタルタルの真っ白な海から、イカゲソのから揚げやちくわ、昆布などを救出しながら食べ進めて行けば…あっという間に食べ終わってしまいますよ。
さらに美味しさのヒミツをもう一つ。
「おべんとうタル助」では地元の厳選素材を使用しています。
米は、冨山さんが食べ比べをした上で選んだツヤツヤの南関米を使用。
卵は夏は小ぶりで旨みが詰まったもの、冬は大きく優しい味わいのもの…など、その季節で美味しいものを。
イカは素材自体にしっかりと味が付いたものを使っているのだとか。
取材時はとても明るいスタッフの皆さんが
てきぱきとお弁当を仕上げていました。
将来、どんな存在になっていると思いますか?の問いに、
「大牟田が大好きなので、地元に愛されるお店で居続けると嬉しいですね」
との返事。
とっても明るい気持ちになるお弁当、ごちそうさまでした!
注文の半分以上がイカ弁当! クリーミーなタルタルがON。
「マイショップ」
最後は通町にある「マイショップ」へ。
こちらは令和2年12月に誕生しました!
こちらもマイショップのオーナーたちが、閉店してしまった「昔の“イカタル弁当”」の味をもう一度食べたい!という思いでオープンしたお店。
こちらで大活躍なのが、
なんと80才以上という御年にもかかわらず
10kgの材料もモノともしない“スーパーおばあちゃん”の森川さん!その森川さん達と試行錯誤しながら昔の味に近づけたお弁当を提供しています。
こちらのタルタルは、とっても軽くクリーミーな印象。
たっぷりかかっていてもふんわりと口どけも良く、軽く食べられます。
取材時対応いただいたオーナーの妹さん曰く、
「当店のお弁当種類の半分はタルタルで出来ています!」。
そんなタルタル愛で溢れるお店では、大牟田市のソウルフードとしてこの味を広めていくべく、今後もお客様に愛されるイカ弁当をはじめとするタルタルの弁当を作っていきたいとのこと。
「注文ってやっぱりイカ弁当が多いんですか?」
伺うと、お弁当の注文の半分はイカ弁当というから、その人気に驚き!
タルタル好きだからこそ実現したお店の味わいに、
今日も多くのファンが訪れています。
今回紹介した3店舗ともに、繁忙時間をずらして取材したにもかかわらず
常に多くのお客さんが訪れていました。
「イカ弁当、タル増しで!」
「イカタル、増し増し。から揚げ1個トッピング」
「イカ。ミーターで、ごはん大盛り」
など、それぞれに好きなトッピングで注文している姿を見ると、もうこれは大牟田市の一つの食文化であると思えますね。
「美味しいご飯で、色んな人にお腹いっぱいになってほしい」と、
石井繁徳さんが愛情をたっぷり込めて作ったイカタル弁当。
これからも皆さんのお腹を満たしていくことでしょう!