平成16年まで、大牟田市には「松屋」という老舗デパートがありました。
「松屋」は大牟田市民が集まるシンボル的な存在で、買い物はもちろん文化や流行を知る交流の場でもあったそうです。
そして本館に6階には有明海を見渡すファミリー食堂があり、そこで提供されていた「洋風かつ丼」というメニューが大人気でした。

老舗デパートだった「松屋」/写真協力:石炭産業科学館
▲老舗デパートだった「松屋」/写真協力:石炭産業科学館

そして「松屋」の閉館からちょうど10年後の平成26年7月2日、「おおむた洋風かつ丼研究会」が大牟田市のご当地グルメとして「洋風かつ丼」を復活させました。

楕円形のお皿にカツ、とろみのあるソースがかかった洋風かつ丼/「彩花」
▲楕円形のお皿にカツ、とろみのあるソースがかかった洋風かつ丼/「彩花」

現在では、大牟田市内9カ所の飲食店で「洋風かつ丼」を提供中。
「松屋」の味を忠実に再現したものもあれば、オリジナリティ溢れるものもあります。

1. 白いご飯にそのままカツを載せる(キャベツなどは敷かない)
2. とろみのあるソースを使う(市販のソースはNG)
3. お箸ではなくフォークで食べる(“洋風”気分を味わって !)

上記3つが「洋風かつ丼」の定義。
カツはロースが基本ですが、チキンやビーフでもOK。
様々な味わいが楽しめるのも嬉しいですね。

「洋風かつ丼」は、下記のサイトでチェックできますよ!

今回はそんな中でも特徴のある2店舗をご紹介します !

甘酸っぱいあんがトロ~リ…これぞ「洋風かつ丼」 !

「中国料理 彩花」

彩花の外観。本格中華がリーズナブルに味わえるお店
▲本格中華がリーズナブルに味わえるお店

東京で10年修業したオーナーシェフ、松尾義博さんが腕を振るう「中国料理 彩花」は、地元で愛される本格中華の店。

こちらは「おおむた洋風かつ丼研究会」認定の味の継承店。
つまり当時の「洋風かつ丼」を限りなく近く再現しています。

オーナーシェフ、松尾義博さん
▲オーナーシェフ、松尾義博さん

復活させると決まり、試行錯誤の上生まれた味。
当時の苦労を松尾さんが教えてくれました。

「レシピはあったけど、当時使っていた調味料がもうなくて。近い味の調味料を見つけて、何度も作り直して…。当時の味わいを知っている人に食べてもらってようやく納得できるものができたって感じです」。

今はない味を、記憶をたどりながら再現するのはとても大変だったそう。

カツにとろ~り餡が !!
▲カツにとろ~り餡が !!

食べてみたら、きっとその言葉も納得するはず !とっても深みがある味わいなんです。
甘さと酸味が絶妙で、独特な深みがありつつも、後口はさっぱり !なんとも不思議 !
サックサクのロースかつに絡ませると、肉の甘みも相まって美味しい。

「洋風かつ丼」は880円
▲「洋風かつ丼」は880円

ウスターソースや醤油、ガラスープ、和食の出汁スープ…様々な調味料やスープが使用されているそう。うん、これは“洋風”かつ丼 !!

「何でもパパッと行動したい大牟田の人たちに早く提供できるように、仕上げの手間を省いたメニューらしいですよ」。
そう教えていただきました。

ソースは手間暇かかってますが、なるほど仕上げが早い !
大牟田だからこそ誕生したグルメなんですね。

広々とした店内。4名~対応できる個室もあり
▲広々とした店内。4名~対応できる個室もあり

大牟田市民が愛する懐かしい味「洋風かつ丼」はもちろんですが、エビチリや麻婆豆腐など本格中華も絶品です。ぜひ味わってみてください !

中国料理 彩花

大牟田市笹林町1-1-13

0944571155

11時30分から13時30分LO・17時30分から20時

火曜・水曜休

野菜と牛の旨味がギュギュ~ッと凝縮ソース!

「レストランだいふく」

次は、大牟田駅すぐそばの洋食レストラン「だいふく」をご紹介。
こちらは和洋の菓子やパンを販売する「菓舗だいふく」の2階にレストランを構えます。

お菓子やパンを販売している1階横の階段を上って2階へ
▲お菓子やパンを販売している1階横の階段を上って2階へ

大正15年頃に、創業者である友清千代さんが“だいふく餅”をリヤカーを引いて販売していたことから名付けられたこのお店、約100年もの歴史を有します!すごい!

2階にある洋食レストランも創業80年以上。
レトロな店内もとても素敵!数々の要人もこちらを訪れたとか。

こちらの「洋風かつ丼」は、レストランで提供している人気メニュー「ビーフシチュー」をアレンジした逸品。

「洋風かつ丼」は単品で980円、スープ・サラダ付で1360円
▲「洋風かつ丼」は単品で980円、スープ・サラダ付で1360円

何といっても特筆したいのはこのソース!!
牛骨と野菜をオーブンで焼きこんで、そこから煮込んだフォンで作ったデミグラスソース、美味しくないはずがありません。

煮込む前の牛骨と野菜。豪快!
▲煮込む前の牛骨と野菜。豪快!

牛骨の髄と、野菜の優しい甘みがトロットロに溶け込んだフォンは、寸胴1杯から半分になるまで煮込んでいるそう。

このデミグラスソースはビーフシチューでも味わえますよ
▲このデミグラスソースはビーフシチューでも味わえますよ

こんなデミグラスソースがたっぷり乗った「洋風かつ丼」。
単品ではランチでしか提供していないにもかかわらず
地元の方や観光客などに評判のメニューに。

もう、濃厚で旨みたっぷりなこのソースの虜です…!

ロースカツのパン粉は自社製造のパンを使用
▲ロースカツのパン粉は自社製造のパンを使用

こだわりの詰まった「洋風かつ丼」をレストランで堪能した後は、1階の「菓舗だいふく」でお菓子やパンのお土産を購入するのもお勧めです!

「菓舗だいふく」は8時から18時まで営業
▲「菓舗だいふく」は8時から18時まで営業

日常遣いのパンやちょっとした手土産にピッタリの和菓子、また自分へのご褒美にも嬉しいケーキなどのスイーツも「菓舗だいふく」で揃いますよ。

レストランだいふく

大牟田市有明町2-1-3

0944533333

11時から14時(夜営業は予約のみ・洋風かつ丼をコースの一品として提供も可能)

水曜休

その昔大牟田市に住む人たちは、
「松屋」で動くエスカレーターに初めて出会い、
休日は屋上遊園地で遊び、
そして「松屋」が報せるミュージックサイレンを合図に「もう帰らなきゃ」「お昼の時間だ !」と暮らしていました。

「洋風かつ丼」は、そんな在りし日の大牟田市を思い出させてくれる味。
「松屋」に出かけることが楽しみだったその時代、「洋風かつ丼」はとてもハイカラなご飯でした。

デパート最上階の有明海を見渡すファミリーレストラン。
周りはワイワイ賑やかな家族連れの声。
そしてテーブルに提供される「洋風かつ丼」―。
そんなタイムスリップした気分を、
「洋風かつ丼」で味わってみませんか。