活気とエネルギー溢れる“炭鉱の町”として栄えた大牟田市。
平成9年3月の三井三池炭鉱の閉山を経て、“炭鉱の町”から炭鉱文化の名残を残す古き良き街並みに変化しました。
昭和初期~中期に誕生した老舗がたくさんあり、タイムスリップしたかのような街並み…。
そんな郷愁くすぐられるような風景や、移り変わる大牟田の町と人を数十年以上にわたって見守り続けているお店を紹介します。
まずは大牟田駅から徒歩10分ほどの上官町へ。上官町2丁目交差点にある「中上そう菜天ぷら店」を訪れます。
ホクホク、甘い!名物のコロッケ&いも万十は70円!?
「中上そう菜天ぷら店」
もうこの佇まい!店構えだけでお惣菜が美味しいことがわかります。
「こんにちはー」と声をかけると、
ひょこっとお店のお母さんが店頭に来て下さいました。
50年以上もこのお店で惣菜を作り続けている木下都子さん。
都子さんのお母さんが60年以上前にこのお店を開き、
今では都子さんの弟さんがオーナーとして営んでいるそうです。
こんなにたくさんのおかず盛でこのお値段…?
素朴な煮物や揚げ物がずらりとショーケースに並びます。
今では珍しい「くじら」も!
給食のメニューでくじらを食べていた40代以上の人は、「懐かしい!」と購入する人が多いとか。
「毎朝3時に来て、お惣菜作っているのよ。」と話す都子さん。
定休日は日曜日だけなので、それ以外は毎日店にいるそうです。
「大牟田に帰省した人が『久しぶりに食べたくなって来た!』とか、お馴染みさんが子供とか連れてきてくれたりね、そりゃ嬉しいですよ」。
半世紀もこの店頭から大牟田の町を眺めてきた都子さんはそう言います。
これだけは食べてほしい!という自慢の「コロッケ」と「いも万十」をいただきました。
それぞれ70円(しかも税込み!)という良心的な料金だけでありがたいのに…これがめちゃめちゃ美味しいんです!
からいもを潰して甘くしているいも万十、中身はぎっしり!!
衣はサクッと、中身はしっとり。揚げたてだと、もっと美味しいのだとか。
コロッケは、ジャガイモにひき肉を加えたシンプルなもの…のはずなのに、なんでこんなに美味しいんでしょう!
5個セットのコロッケがショーケースの上で並んでいました。
コロッケもいも万十も5個や10個単位で購入していく人が多いのだとか。
とはいえ早朝3時とは…そんなに朝早くなくても良いのでは?
と、思わず質問すると
「早朝に買いに来る方もいるから、突然買えなくなったら困るでしょ?」
との答え。
取材時にも、「コロッケと盛り合わせ」や「いも万十10個」など、
ショーケースを見ずに注文する方が多くいました。
きっとこのお店とお惣菜は、“大牟田の町の日常”なんですね。
「毎日おるけん、またおいで!」そう言ってくれた都子さん。
素朴な味わいの惣菜と都子さんの笑顔、
ずっと続いて欲しい「大牟田レトロ遺産」です!
夏はかき氷、冬はお団子。大牟田の甘味処
「金時屋」
「中上そう菜天ぷら店」から徒歩で3分ほどの場所にある「金時屋」。
こちらは昭和8年創業という老舗和菓子屋です。
お店に入ると3台のテーブル席、そして壁にはご主人の趣味だという昔懐かしい映画のポスターが飾られています。
夏には、かき氷のお店として学生や子供たちも多く訪れるこちら。
かき氷メニューの中には、竹炭を使用した黒い氷に特産である上内ミカンの蜜(みかん100%の奥様手作り!)をかけた「石炭金時(500円)」なるものもあるそう。
取材時の冬季は、あったかいぜんざいを提供。
そしてお団子やお饅頭がショーケースを賑わせていました。
店主の藤田潔さんと奥さま、そして息子さんの3人で、早朝より作っているというお饅頭とお団子は、どれも惚れ惚れするほどキレイ!
朝4時30分から、餅を仕込むという藤田さん。
もっちりと仕上がる佐賀米を使うことがこだわりです。
コシがあり、時間がたっても流れない(形が崩れない)と評判の金時屋の餅。
だから、餅踏みや結婚、出産などのお祝い事ががあると「金時屋さんのお餅を」と購入する方が多いのです。
「食べて行ってください」といちご大福(160円)をいただきました。
甘酸っぱいいちごと優しい餡、くちどけの良い求肥にほっこりしました。
こんなひと時を「金時屋」でぜひ過ごしてくださいね。
大牟田駅周辺も心くすぐるレトロな風景がいっぱい。
大牟田駅周辺には飲食店が並ぶ通りや商店街が縦横に広がっています。
安くていっぱい飲めるお店が揃う(=年金受給の方にも優しい)「有明商店街」の通称「年金通り」は線路そばにあります。
スナックや小料理屋がたくさん。お昼前後より営業しているお店もありますよ。
「年金通り」から歩いて3分ほどにある「銀座通り商店街」。
空へ飛び立つロケットみたい?こちらは大牟田市のメイン通りのひとつとなります。
通りから電車が眺められるなんて、珍しい!
商店街からはこんなにユニークな写真も撮影できます。
それから歩いて「新銀座通り」へ。
新とつくからには新しいのだろうと思いきや…。
さらに歴史感じる佇まいに。
「新銀座通り」は炭鉱で働く方などが、靴や服を購入する店も多かったようです。
こんな可愛い看板も!
置き忘れられた自転車が…。こんな無造作な感じも歴史を感じさせます。
商店街以外にも趣のある風景はあちこちに見られます。
お店が空いていたら入ってみるも良し、風景写真を撮影するのも良し。
古いだけじゃない、面白い大牟田市の町風景を感じ取ってくださいね。
また、大牟田らしいものも発見できますよ。
電話ボックスの上には大牟田らしく、大蛇が!
橋の欄干にも大蛇を見つけましたよ!
マンホールには、大牟田市のキャラクター「ジャー坊」がいました。
旅の途中、時間があれば街中をぶらぶらしてみてください。
ちょっとノスタルジックでユニークな風景に出会えます!
心も体もぽかぽかになる
「神明湯」
国道208号線から、「ホテルニューガイアオームタガーデン」の方向へ。
脇の小道に入ると「神明湯」にたどり着きます。
ここは昭和25年創業の銭湯。
70年以上の歴史を持つとあり、古き良き雰囲気が伝わります。
中に入ると、昭和にタイムスリップしたかのような趣き。
料金は大人400円、小学生60円とリーズナブル。
銭湯の壁に飾られた富士山や浴槽入り口の富嶽三十六景の絵もイイ感じです!
可愛いタイル敷でこんなに広々!浴槽は楕円形のタイプです。
奥には森林浴が楽しめる浴槽もありましたよ。
嫁いで59年ずっと「神明湯」を営んできた古賀紀代子さんが
愛犬マロちゃんと番台でお客さんを見守っています。
帰り際には小さなジュースを手渡してくれる紀代子さん。
お客さんとは毎日お話しています。
「もう60年になるけど、気持ちよかったーって言ってもらえると
毎回やっぱり嬉しいのよ。」
素敵な笑顔で迎えてくれる「神明湯」。
大牟田市の旅の最後に、こんな銭湯で締めくくるのはいかがです?
体はもちろん、心までぽかぽかになりますよ。
今回ご紹介した町風景は本当に一部。
大牟田市は、素朴な風景もショッピングモールなど近代的なスポットも併せ持ちます。
色んな変化を遂げた場所もあれば、昔の良さをそのまま残すお店や景色もたくさん。
ぜひ、そんな「大牟田レトロ遺産」見つけてくださいね。