大牟田駅の西口駅前広場にある「hara harmony coffee」。1952年まで大牟田のまちを走っていた路面電車204号の車両をそのまま活かしながら、2019年に惜しまれつつ閉店した「コーヒサロンはら」から継承した本格的なドリップコーヒーやフルーツサンドなどが並ぶユニークなカフェです。2021年3月のオープン以来話題を呼び、今や大牟田の新たな待ち合わせスポットとして定着しつつあります。
今回ご案内してもらうのは、「hara harmony coffee」の店員、紫牟田あいらさん。
飲酒歴はわずか3年というフレッシュなあいらさんですが、「大牟田の若者酒場事情はお任せください!」と豪語します。
聞けばお酒の場が大好きとあって、週3日は飲み歩いているとか。これはお任せするしかないと、編集部は駅前へ浮かれ気分で向かったのでした。
1軒目:「monzou」
お好み焼きと創作料理と無数のお酒が素敵に同居する長屋酒場
大牟田駅から北西へ徒歩10分ほど、着いたのは大牟田の繁華街エリア。
あいらさんと向かったのは、”寿通り”に店を構える「monzou」です。
古い木造の長屋をリノベーションして、2005年の開店後も、壁を取っ払って隣部屋まで広げたり、テラス席を増設したりと、現在進行形で進化中の店なのです。
「階段を上ってお店に入るところが好き」というあいらさん。
2階へ上がると、中央にキッチンがあり奥に長く続く素敵な空間が広がります。
とりあえず一杯目のお酒を選んでいると、「monzouに来たら、 しそチーズを食べんと怒ります!」とあいらさんが激推しするのが、monzou名物のお好み焼きです。
豚玉・イカ玉・海老玉の3種があり、トッピングが8種追加できます。
この日は「豚玉・しそ・チーズ」に加えて「イカ玉・紅生姜」の組み合わせも注文。ワインに合いそうな一品も頼みつつ、料理を待ちます。
お好み焼きを待つ間に運ばれてきたのは、香り高いプロシュートに季節限定メニューの牡蠣のアヒージョです。あいらさんも「必ず注文する」というプロシュートはふわりと柔らかい食感。程よい塩加減でお酒が進みます。
キッチンからソースの良い香りが漂ってくる中、一同は、お好み焼きに備えて、monzouオリジナルビール『OKONOMI CRAFT』を注文します。
なんとmonzouでは「お好み焼きに合うクラフトビール」を開発されているのです。「ビールは練習中です」というあいらさんもチャレンジ。
じゅわじゅわと良い音を立ててお好み焼きが運ばれてきました。
あいらさん曰く、イカ玉・紅生姜は「平べったいたこ焼きの味♡」だそうです。
お好み焼きに"しそ"のトッピングはあまり見かけませんが、そのアイディアは店主である久冨さんのお母様の味がルーツなのだそう。
「いつも家で母親が作ってたんですよ」。そう言って見せてくださったのは、使い込まれたアルミ鍋。鍋で煮物などを作りながら、蓋のほうではお好み焼きを焼くのが、お母様の定番だったそう。なんと効率的な料理スタイル! 特徴のある薄い生地は、鍋蓋で焼いていたからという事が判明。
さらに、お好み焼きを焼く鉄板は、大牟田の高校生へ依頼し溶接して作ってもらったオリジナルとのこと。受け継いだ味を最高の状態で味わってもらいたいという、店主の愛溢れるエピソードを聞きながら食べるお好み焼きは、粉物の重たさとは無縁の軽やかさで、ビールが進む美味しさでございました。
さてさて、今日も次の酒場が待っています。ワインクーラーを横目にもう一杯飲みたい気持ちをおさえつつ、お次は、なんと同じ建物の1階へ移動します。
2軒目:「酒場 第2コーナー」
サクッと立ち飲みもできるおつまみ充実の沼系酒場
2軒目に向かったのは、monzouから徒歩10秒、同じ建物の1階にある「酒場 第2コーナー」です。はしご酒の2軒目にまさにぴったりな店名です。
カウンターがメインの店内には、常連さんらしきお客様が。隣との距離が近く、対面で店主と会話を楽しむ様子は、さながら屋台のような一人でも楽しめそうな和気あいあいとした雰囲気です。カウンターに座ると、「無限に飲めます!」という「ジャスミンハイ」と「手羽先」のいつものセットを注文しました。
第2コーナーには角打ち風に立ち飲みができるスペースもあります。ささっと来て1杯飲んで次! と軽やかに飲みたい人にとっても利用しやすそうなおつまみが充実。
店主のぜんさんおすすめは、皮から全て手作りという「焼き餃子」と体が温まりそうな「肉豆腐」。はしご酒でつまむのにちょうど良し!
お出汁の効いたやさしい味わいの肉豆腐とジャスミンハイをたしなみながら、店主とのおしゃべりを楽しんでいると、「手羽先」が運ばれてきました。
バットに盛られて運ばれてくる感じも屋台の雰囲気があってワクワクします。
ここに来たら必ず頼むという手羽先は皮がパリッとしていて甘辛い味に、手が止まりません。
お隣に座った常連さんとも会話を楽しみつつ、終始嬉しそうに店主とカウンターでお話しするあいらさん。店主のぜんさんの笑顔を眺めれば、なぜだかジャスミンハイがより爽やかに飲み尽くせる気がします。
さて、おなかも心も満たされた一行は、次なる酒場へ。一つ通りを挟んだエリアの一角で、複合ビルの中にあるお店を目指します。
3軒目:「カンカンバー ビタミンZ」
元気を注入したい時に行きたい。一粒で3度美味しいエンタメバー
ネオン看板が並ぶ複合ビルの一角にある「カンカンバー ビタミンZ」。同じビルの「僕とピクニック」(通称“僕ピク”)の系列店であり、いずれも一度聞いたら耳に残って離れない店名です。
よりカジュアルにお酒と夜の大牟田を気軽に楽しんでもらいたいという事と、10年ほど前まで営業していた「カンカンバー」を復活させたい、という思いで始まったお店なのだそう。
複合ビルのお店となると、どうしても一見さんは入りづらいイメージがありますが、温かく迎えてくれた店長の俊亮さんの笑顔に、そんな不安はすぐに吹き飛びました。
ビタミンZでは、カラオケとダーツが楽しめるというエンターテイメント感満載のお店です。飲み放題・歌い放題で1時間あたりの料金設定が明快なので安心です。(1時間:男性 1,500円・女性 1,000円)
しかし、定番はそれだけではありません。なんと常時20種以上の「パフェ」が食べられるという甘いもの好きには尊すぎるお店なのです。深夜まで営業しているので、飲んだ後の「〆パフェ」が若いお客さまにも人気なのだそう。
あいらさん曰く、「お酒のクオリティが高い! お料理も美味しいし、パフェも食べられるから大好きです!」とのこと。そんなあいらさんが最初の1杯に選んだのは「Zサワー」なるカクテル。すっぱくて目も酔いも覚めそうな特製のお酒です。飲み始めて早々に、「友達を呼んじゃいました」と無邪気に笑うあいらさん。いつも大牟田ではしご酒をするという友人のおふたりが合流して、賑やかにスタートです。
美味しいお酒でテンションの上がった3人。ここからはダーツタイムへと突入です。1ゲーム100円とリーズナブルに楽しめます。友人同士でももちろんプレイできますし、お一人でも、スタッフの方が一緒にプレイしてくれるとのことで心強い!
ダーツはいつも「下手なんですー」と言っていたあいらさんでしたがなんとど真ん中に命中。ダントツ1位という結果に「もってますねーー!」とテンション上がっておりました。
ダーツで遊んでいるあいだに、ついに! やってきました! パフェです!
本格的なパフェが運ばれてくると、互いのパフェをシェアしたり、お酒のつまみにしたり。パフェを前にすれば盛り上がること間違いなしです。「食べきれないかも…」、という方には、アイスクリーム単品もあります。罪悪感は一旦忘れて、「〆パフェ」を味わいましょう。
営業は21時から3時まで。店長の俊亮さんをはじめ、スタッフのみなさまがとにかくノリよく盛り上げてくれます。カウンターで会話を楽しむもよし、ダーツを楽しむもよし、お腹を満たすもよし。それぞれの楽しみ方を見つけつつ、元気を注入しに行きたい楽しさ満点のお店でした。
さて、口の中が甘―く満たされた一行が最後に向かうのは、ちょい呑みができる蕎麦屋さんです。
4軒目:「そばと」
1軒目にもちょい呑みにも。体にしみわたる出汁と酒が味わえる蕎麦居酒屋
白い暖簾に杉玉がひとつ。すっきりと洗練された入り口を入ると、左手には手打ちそばのブース。そうです。「手打ちのそば」が食べられるお店です。
「そばも美味しいし、料理がすべてクオリティが高い、大人の店です」とあいらさん。お店の落ち着いた雰囲気もお気に入りのポイントなのだそう。
「関東によくある、お酒を飲めるそば屋の空間や雰囲気が好きだった」ことが、自ら店を始めた理由のひとつという店主の田尻さん。元々東京の蕎麦屋で働いていましたが、地元の大牟田に戻り、飲みながら本格そばを味わえるお店として「そばと」を始めたのだそう。
入荷状況に応じてその日のおすすめが変わる刺身や、揚げたての天ぷらなど、「そばに合う一品」はやっぱり魅力的。ということで、締めそばはもちろん、好みのお酒とそばに合う一品をしっかり注文。
「おいしーーい!」とあいらさんが天を仰ぐつやつやで新鮮な刺身や、ふくふくとしただし巻きたまごと、酒のアテというにはちょっと贅沢な、でもちょうど良い料理がそろいます。季節の食材に合わせてその日のおすすめメニューが変わる、本格的な和食は、酒呑みたちの胃袋を癒してくれます。ホッと一息ついているところに、やってまいりました。「そばと」の手打ちそばです。
かけそばにざるそば、付け合わせに天ぷらと、そばをちゃんと味わうための顔ぶれが揃います。日本酒をちびちびとたしなみながらそばをすする。なんと”粋”な締めなのでしょう!美味しいお酒と美味しいもので至福の時を過ごせました。
編集後記
お好み焼き、餃子、パフェにダーツを挟んで〆に、そば。お酒とともに、とにかく多様な楽しみ方を教えてもらった今回のはしご酒。
4軒を制してもまだ、ほろ酔い。やっぱりお酒好きとあって今回の案内人もお酒が強いようです。。。最後まで元気に素敵な笑顔を見せてくれたあいらさん。
あいらさんと話をするなかでは、「大牟田は同年代が少ない」というため息を漏らす場面もありました。高校卒業、進学や就職で福岡市や県外に出ていく友人を何度見送ったことか。それでもあいらさんが、一度大学進学で離れた大牟田に戻ってきた理由を聞くと、「大牟田が好きだから」と、真っ直ぐな答えが。
現在、「hara harmony coffee」を運営するまちづくり会社の「大牟田ビンテージのまち株式会社」に所属するあいらさん。「ラテアートもできるようになったんです!」と、コーヒーを淹れることにも一生懸命な彼女が目指すのは、「若者がプレイヤーとなって、大牟田で自分たちの遊び場を作るための“伴奏者”になる」こと。
人が好き、話すのが好きというあいらさんにとって、飲みに行く理由は「人に会いに行くため」なのだそう。
大牟田には人に会いに行きたくなるお店がたくさんあります。みなさまの“推し”飲み屋を見つけに夜の大牟田へ繰り出してみてください。